[ショートインタビュー]2026.1.30
看護師ボクサー前原香那枝が辿り着いた3度目の正直

日本女子ミニマム級2位の前原香那枝(36=三迫)は、2月10日(火)、後楽園ホールで開催される「ダイヤモンドグローブ」で同級5位の守隨あゆみ(しゅずい・あゆみ/31=TEAM10COUNT)と空位の王座を争う。
看護師として総合病院に勤務し、夜勤を含む不規則な生活を送りながら、トップコンテンダーとしてリングに立ち続ける36歳。
昨年1月、7月と日本王座に挑み、いずれも惜敗。内容では評価されながらも、ベルトには届かなかった。それでも前原は、リングを降りなかった。
3試合連続のタイトル挑戦。言葉だけを並べれば簡単だが、その裏側には、夜23時から翌朝までの勤務、仮眠と練習を挟んで再出勤という過酷な日常がある。
「ボクシングのために、仕事を犠牲にする」のではなく、「仕事を含めた生活の中で、ボクシングを続ける」。その選択が、前原のスタイルだ。
過去2戦を振り返った際、彼女は「見栄え」という言葉を口にした。気持ちだけで前に出て、ディフェンスや細部が疎かになり、判断の分かれる場面で相手を良く見せてしまった――。多くの選手が避けたがる自己否定を、前原は淡々と受け止める。
そして重要なのは、その反省を感情論で終わらせていない点だ。何が足りなかったのかを考え、練習メニューに落とし込み、技術として積み直す。その過程を「楽しい」と語れるのは、勝敗だけで自分を測っていない証拠だろう。
守隨あゆみの印象を「自分を信じる気持ちが強い」と語った前原だが、その言葉は自分自身にも重なる。派手なアピールはないが、揺るぎない自己認識がある。
実家では300頭の牛を世話し、重機を操る。その身体感覚と、命を扱う看護師という仕事が、彼女のボクシングを形作っている。力任せではなく、無理をせず、淡々と積み上げる。だからこそ、時間はかかっても、簡単には折れない。
加藤健太トレーナーへの言葉には、前原のキャリアが凝縮されていた。「技術も気持ちも弱い私をここまで連れてきてくれた」。
敗戦の悔し涙を知っているからこそ、勝った時に流す涙の意味を、彼女は誰よりも理解している。
今回の王座決定戦は、単なる再挑戦ではない。生活と向き合い、敗戦と向き合い、自分自身を更新し続けてきた時間に対する結論だ。静かに、確実に、その瞬間は近づいている。
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